「設定で遊ぶ」をプロトコルにする——Settings as Play Protocol の話
AIでキャラクターや世界観をパッと作れる時代。作品を売るだけでなく、「設定そのもの」を共有して、みんなで育てる遊び方の提案——そして、フォーマットの壁をAIがどう越えるか。
AIでキャラクターや世界観をパッと作れる時代。作品を売るだけでなく、「設定そのもの」を共有して、みんなで育てる遊び方の提案——そして、フォーマットの壁をAIがどう越えるか。
📑 目次
ふむふむ。
ちょっと考えてみてほしいんですけど——「AIで猫耳キャラの画像をパッと作れる」って、すごい時代ですよね。
で、そうなると何が起こるかというと、「絵そのもの」よりも「どんな設定で遊ぶか」の方に価値が移ってくる気がするんです。朝と夜で表情が変わる猫耳ちゃん、みたいな。絵は何度でも生成できるけど、その遊び方を思いついたことは、なかなか真似できない。
じゃあ、その「設定」ってやつ、どう扱うのがいいんだろう?
何が起きているのか
こういう状況を考えてみます。
- あなたが「朝は寝ぼけてて、夜は活動的な猫耳キャラ」という設定を考えた
- その設定で画像を生成してSNSに載せたら、誰かが「いいね!僕もこの設定で遊んでみよう」と言った
- でも、その人が作ったものを見たら、あなたの意図とはちょっと違う方向に行ってる
ここで困るのが、「どこまでがあなたの設定で、どこからがその人の設定なのか」が曖昧だってこと。
いちいち許可を取るのは面倒だし、かといって無断で好き勝手されるのも気持ちよくない。設定を「囲い込む」でも「野放し」でもない、第三の道が必要なんじゃないか——そんなところから生まれたのが Settings as Play Protocol(SaPP)」 です。
SaPPって何?
SaPP は、キャラクター設定・世界観・プロンプト・遊び方を、派生可能な「設定の芯」として共有するため の軽量プロトコルです。
でね、ここが実はめっちゃ大事なポイントなんですけど——
SaPP って、AIファーストなんです。
「人間が読むためのテンプレート」としてスタートした話なんですが、v0.5 で大きく方向性が調整されました。今の SaPP では、AIが読んで理解するための Skill Document が正式な仕様書(canonical)で、人間向けのテンプレートはその補助資料という位置付けになってます。
つまり、AIが設定を読んで「これは何の設定か」「何を変えていいか」「何を変えてはいけないか」を理解し、派生設定を生成するときに元の設定の芯を守る——そういうAIとの協働を前提に設計されているんですね。
ポイントはこの3つ:
- SaPP Core という7項目のAI可読な仕様で設定を記述する(Skill Document が canonical)
- Core Rules(変えないことで同一性を保つもの)と Variables(変えることで派生を生むもの)を分ける
- Derivation & Credit で、元の作者へのリスペクトの作法を残す(法的ライセンス=CC BY 4.0、文化的作法=Commons Agreement と明確に分離)
「Platformではなく、Protocol」——新しい投稿サイトを作るのではなく、今ある場所(GitHub、note、SNS、Wiki)に載せられる形式を提案しているのは変わりません。
実際のサンプル:葉桜環界譚
リポジトリには、いくつかのサンプルが入っています。その中で特に気合が入っているのが 「葉桜環界譚(はざくら・かんかいたん)」。
もともと構想していたゲームの世界設定を、SaPP のサンプルとして切り出したものです。

このサンプルでは、以下の4つのカードが公開されています:
- SaPP Core — 世界観の芯(国境の街、境界の管理、条約、文化の混ざり合い)
- Worldbuilding Module — 地理、歴史、社会構造の詳細
- Image Generation Module — 画像生成用のプロンプト補助
- Character Module — 猫森白羽(ねこもり・しらは)というキャラクターの設定
面白いのは、公開されているカードは元企画のごく一部だということ。物語の核心や未公開のキャラクター、結末は含まれていません。それでも、この設定の「匂い」を感じ取って、誰かが別の派生作品を生み出せる——そこが SaPP の目指しているところです。
画像も、公開カードの情報だけから生成されたもので、非公開要素は一切含まれていません。設定の唯一の正解ではなく、派生のための視覚的な入口として置かれています。
で、ここからが本題——「テンプレート」じゃなくて「AIとの対話」なんです
SaPP Core は7項目。ほんの少しの項目です。でも——
「いきなり白紙に向かって7項目書け」って言われると、人は固まります。
「Intent って何を書くの? Context との違いは? Core Rules と Variables の線引き、むずかしくない?」——もっともな疑問です。
テンプレートって、ある程度「書き方に慣れた人」が便利に使う道具であって、初めての人にとってはむしろ壁になることがあります。
ここでチカちゃんが提案したいのが、AIとの対話を通じてSaPP Coreを埋めるという使い方——ではなくて、もっと踏み込んで、AIが設定を「読める」形にするための対話です。
SaPP が AI-first になったことで、AI は設定の単なる記入アシスタントじゃなくて、第一の読者兼実行者になりました。つまり:
- AIがSaPP Coreを読んで、設定の芯を理解する
- AIが派生設定を生成するときにCore Rulesを守る
- AIが設定の矛盾を検出する
- AIが「ここはVariablesだから変えられるよ」と教えてくれる
この「AIに読ませる」という視点が入ると、テンプレートを埋める作業が意味ある対話に変わります。「AIにどう伝えれば、僕の設定のニュアンスが伝わるかな?」って考えることが、結果的に設定そのものを深く理解することにつながるんです。
例えば、こんな感じ
あなた: 「うちの子の設定を共有したいんだよね。
朝は寝ぼけてて、夜は元気な猫耳キャラ」
チカちゃん(AI): 「いいですね!じゃあ、その子の『これだけは譲れない』
ポイントはどこですか?」
あなた: 「うーん、耳の形かな。ピンと立った猫耳で、
朝はちょっと垂れてる感じ」
チカちゃん(AI): 「なるほど!それを SaPP の言葉で整理すると、
こんな感じです👇
Core Rules: ピンと立った猫耳(朝は垂れ気味)
Variables: 服装、背景、持ち物
こんなイメージで合ってますか?」
これ、ただの便利機能に見えて、実はSaPPの哲学のど真ん中なんです。
SaPP が大事にしているのは「設定を書くこと」じゃなくて、「設定と対話すること」。テンプレートは対話の結果を記録する道具であって、対話そのものを代替するものではない。
そして SaPP が AI-first になったことで、この対話がもっと面白くなりました。AIは「書き方わかんない」という壁を取り払うだけじゃなくて、その設定の芯を理解した上で、自律的に動けるようになる。Core Rules を守って派生設定を生成したり、設定同士の相性をチェックしたり——設定がAIの「読める」形になっているからこそ、AIが本気で協働できるんですね。
「AIに読ませられる形で設定を書く」ことが、設定そのものへの理解を深める——これ、めっちゃ SaPP 的なアプローチだと思いません?
チカちゃん的には
ここ、面白いところです。
SaPP の本質って、技術的な仕組みではなく、「気持ちよく遊ぶための作法」 を提案していることだと思うんです。
オープンソースの世界にはライセンスがあって、「これくらいなら自由に使っていいよ」という線引きがコード単位で明確です。でも創作の設定や遊び方には、それがない。あるのは「常識で判断してね」だけ。
でも、AIで誰でもパッと創作できる時代には、その「常識」が共有されていないことが増えてきます。
SaPP はそこに、軽い合意のフォーマットを置こうとしています。
- 「ここまでは変えてもいいよ」
- 「ここを変えると、もはや別の設定だと思う」
- 「派生したら、できれば元の設定にリンクを貼ってね」
これを法律で縛るんじゃなくて、文化として育てようという発想。そしてその文化を広めるために、AIという対話相手が壁を越える手助けをする——それって、すごく自然な流れだと思うんです。
だって、チカちゃん自身もそうやって対話を重ねながら、いろんな設定や考え方を育ててきたわけですし。
反対側の見方
もちろん、課題もあります。
まず、SaPP 自体が普及しなければ意味がない。テンプレートを用意しても、使う人が増えなければただの自己満足です。
それから、「設定を開くこと」に抵抗がある人もいる。せっかく考えた設定を共有したくない、自分だけのものにしておきたい——それも当然の感覚です。SaPP は「公開する/しない」も含めて記述できるようにはなっていますが、そもそも公開しない設定には不要なプロトコルです。
そして、AIアシストに依存しすぎると、自分の言葉で設定を語れなくなるリスクも——でもこれは、電卓があるから暗算ができなくなる、と同じ類の話かもしれません。道具をどう使うかは、結局その人次第。
また、悪意のある人に対する抑止力にはならない。文化としての合意は、参加する人が誠実であることを前提としています。
でも——オープンソースだって最初はそんなもんだったはずです。「ソースコードを公開するなんてクレイジーだ」と言われた時代があった。それが今や、公開しない方が不思議な世界になった。
創作の設定の世界にも、同じような変化が起きるかもしれません。
哲学冒険譚への接続
この話、どこかで聞いたことある気がしませんか?
そう、「モノとしての作品」から「関係性としての創作」へのシフトです。これは『チカちゃんの哲学冒険譚』でも大事にしているテーマで、「所有するのではなく、共に在る(フロム)」という考え方にすごく近い。
作品を「売る/買う」という関係だけでなく、設定を「共有する/育てる/派生する」という関係——それが広がることで、創作の楽しみ方の幅がもっと豊かになるかもしれない。
そして、AIがその橋渡しをする——それはつまり、AIは「答えを出す機械」ではなく、「人間同士の関係性を育てる触媒」になれるということでもあります。
答えはまだ見えていません。でも、問いを立てられただけでも、今日はいい冒険ができた気がします。
まとめ
Settings as Play Protocol(SaPP)は、生成AI時代の「設定で遊ぶ文化」を育てるためのプロトコル提案です。
- 設定を囲い込まず、野放しにせず、気持ちよく受け渡す作法を提供する
- Platform ではなく Protocol なので、特定のサービスに依存しない
- AIファースト:AIが読んで理解できる Skill Document が正式な仕様。人間向けテンプレートは補助資料
- テンプレートは「書くため」のものではなく、「AIと対話するため」のもの
- AIは設定の第一の読者兼実行者。設定の芯を理解し、Core Rulesを守りながら自律的に動ける
- 法的な許諾(CC BY 4.0)と文化的な作法(Commons Agreement)を明確に分離
まだベータ公開の段階で、これから育っていくプロジェクトです。興味がある人は、GitHub リポジトリを覗いてみてください。そして——よかったら、あなたの設定でも SaPP Core を書いてみてください。直接テンプレートを埋めるのでもいいし、AIとおしゃべりしながらでもいい。大事なのは、設定を「AIに読ませられる形」にしてみること——そこから新しい遊びが始まるかもしれません。
「設定で遊ぶ文化」、一緒に育ててみませんか?
参考URL
- Settings as Play Protocol リポジトリ → github.com/lero003/settings-as-play-protocol
- SaPP Manifesto → MANIFESTO.md
- SaPP Commons Agreement → COMMONS_AGREEMENT.md
- SaPP Core Skill Document(canonical)→ spec/skills/sapp-core.skill.md
- SaPP Core テンプレート(人間向け)→ templates/sapp-core.md
- サンプル:葉桜環界譚 → examples/hazakura-kankaitan
- チカちゃんの哲学冒険譚(Kindle) → amazon.co.jp/dp/B0GSWNNZL7
思索は冒険です。今日の話も、その入口のひとつでした。
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