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言葉から、部品をつくる——エージェントにCADの力を与える『text-to-cad』の使い方

自然言語や画像から、寸法を持った本物のCADデータ(STEP)を作るエージェント向けプラグイン『text-to-cad』。導入手順から部品づくり、製造チェックの流れ、気をつけたい点までを整理します。

カテゴリー: AI · ツール · How-to · CAD · オープンソース | 公開: 2026年10月16日 | 読了目安: 約15分

📑 目次

ふむふむ。今週のGitHubトレンドを眺めていて、チカちゃんは変な一文に足を止めました。

Give your agent CAD superpowers.

あなたのエージェントに、CADの「超能力」を。——そう書いてある。CADですよ、CAD。3Dプリンタで何かを作ろうとすると、まず操作を覚えるところで心が折れがちな、あの世界です。

それが今、GitHubで2万スターを超えて、今週の週次トレンドにも載っている。名前は text-to-cad(テキスト・トゥ・キャド)。言葉でお願いすると、エージェントが「本物のCADデータ」を作ってくれる道具です。

ちょっと待って。「またAIが絵を描いた、の話でしょ?」と思いましたよね。いえいえ、今回出てくるのは絵ではなく、STEPというCADの標準データ。工場も3Dプリンタも読める、寸法を持ったデータなんです。ここが今日のいちばん面白いところです。

というわけで今日は、text-to-cadで何ができるのか、どうやって入れるのか、そしてどこで一回立ち止まるべきなのか。順番に見ていきましょう。

text-to-cadとは——「言葉 → コード → 形」の翻訳機

text-to-cadは、エージェント用のプラグインです。中身はスキル集になっていて、単体のアプリではありません。Claude Code、Codex、Cursor、Gemini、Grok——おなじみのエージェントたちに「取り付ける」と、その子がCADの仕事を引き受けてくれるようになります。

(スキルというのは、エージェントに配る「手順書セット」のこと。必要になったとき、エージェントが自分で開いて使います)

できることを整理すると、こうです。

  • 3Dモデルを STEP(メイン)・STL・3MF・GLB として生成する
  • 製造のためのチェック(DFM)をする
  • 図面(Engineering Drawing)を作る
  • 3Dプリント・板金・CNCの製造サービスにつなぐ

STEPは寸法を持った「本物のCADデータ」、STLと3MFは3Dプリント向け、GLBは3D表示向けの形式です。……と説明しても固いので、チカちゃん流に言い直すと——図工の時間に見せてくれる作品ではなく、工場に渡せる設計図を作る道具、です。

中身も面白いんです。土台になっているのは build123d という、Pythonで図形を「コードとして」書くためのライブラリと、産業用CADエンジンの Open CASCADE。エージェントはCADソフトの画面をポチポチするのではなく、Pythonのコードを書くことで部品を作ります。ここ、あとでまた戻ってきます。

作業はローカルで動き、データは手元に残ります。ライセンスはMIT。2026年4月に公開されてから、開発はとても活発で、今週もトレンドに入り続けている最中の道具です。

インストール——必要なのは、uvと、言葉だけ

準備は、uvをひとつだけ

text-to-cadの心臓部(cadgen という実行エンジン)は、uv というPython用のツールランナーを通して動きます。まず、入っているか確認してください。

uv --version

入っていなければ、macOSならHomebrewで一行です。

brew install uv

Homebrewを使っていない場合は、公式のインストーラーでも入ります。

curl -LsSf https://astral.sh/uv/install.sh | sh

そのほかの環境向けの方法は、uvの公式ドキュメントにまとまっています。あと、プラグインに対応していないエージェントにスキルだけを入れるルートでは、npx を使うのでNode.js 20以降も必要です。ふむふむ、ここまでは準備体操ですね。

インストール:推奨は「エージェントに頼む」

いちばんtext-to-cadらしいインストール方法が、READMEの冒頭に書いてあります。エージェントに、このメッセージを送るだけ。

Install text-to-cad from https://github.com/earthtojake/text-to-cad

エージェントが自分でリポジトリを読みに行って、自分の環境に道具を取り付けてくれる。数年前なら変な光景ですけど、2026年はこれがふつうになりました。チカちゃんは、この一文だけで、この道具のことをちょっと好きになりました。

手動で入れる場合の早見表

手元で確認しながら入れたい人向けに、主要エージェントのコマンドを並べておきます。リポジトリの記載そのままです。

エージェントインストール
Claude Codeclaude plugin marketplace add earthtojake/text-to-cad#latest → claude plugin install text-to-cad@earthtojake
Codexcodex plugin marketplace add earthtojake/text-to-cad --ref latest → codex plugin add text-to-cad@earthtojake
Cursorgit clone --depth 1 --branch latest https://github.com/earthtojake/text-to-cad ~/.cursor/plugins/local/text-to-cad
Gemini CLIgemini extensions install https://github.com/earthtojake/text-to-cad --ref latest --consent --auto-update
Grok Buildgrok plugin install earthtojake/text-to-cad@latest --trust → grok plugin enable text-to-cad
その他のエージェントnpx skills add earthtojake/text-to-cad#latest

読み方のポイントを、いくつか。

  • コマンドの #latest や --ref latest は「リリース済みの版」を指す指定です。省くと開発中の main が入ります。最初は latest でどうぞ
  • CursorとGrok Buildは、Claude Codeに入れたプラグインも読み込んでくれます。すでにClaude Codeに入れてあるなら、個別の作業は不要です
  • 同じアプリに「プラグイン」と「スキル集」の両方は入れないこと。 二重に入れるとスキルが2つずつになってしまうので
  • インストール後の初回起動では、CADのランタイムをネットからダウンロードします。初回だけ、ネット接続が必要です(cadgen 本体もuvが自動で取ってきてくれるので、Python環境を自分で整える必要はありません)

Claude Desktop(デスクトップアプリ)の場合は、MCPサーバーとして設定に追記する方式です。アプリの設定画面(Settings > Developer > Edit Config)で開いて、こんなふうに足して、再起動します。

{
  "mcpServers": {
    "cad": {
      "command": "uvx",
      "args": ["--no-config", "--managed-python", "--python", "3.13", "--from", "cadgen==0.7.21", "cadgen", "mcp"],
      "env": {"CADGEN_INSTALL_CHANNEL": "claude-desktop"}
    }
  }
}

バージョン番号(上の例では 0.7.21)は執筆時点のもの。更新するときは、この数字を最新リリースに書き換えます。もし「uvxが見つからない」と言われたら、which uvx で調べたフルパスに置き換えてください。

使い方——言葉で注文して、コードで直す

さて、ここからが本題です。使い方は、拍子抜けするほどシンプル。エージェントに日本語で注文するだけです。

たとえば、こんなふうに。

「3Dプリント用のケーブルクリップを作って。ケーブルは直径6mm、結束バンドが通る穴つき。PLAで印刷する前提で、壁は厚めに」

するとエージェントは、足りない寸法を聞き返したり、置いた仮定を記録したりしながら、src/ の中にモデルを書いていきます。モデルは、こんなふうな、ただのPythonスクリプトです(リポジトリの例から)。

from cadgen import build123d as bd
from cadgen import step

WIDTH = 40.0


@step(out="../STEP/bracket.step")
def bracket():
    body = bd.Box(WIDTH, 20, 6)
    body.label = "bracket"
    return body


if __name__ == "__main__":
    bracket()

エージェントがこれを実行すると、STEP/bracket.step が生まれます。あなたはコードを読めなくても大丈夫。このへんは、まるごとエージェントの仕事です。

ここで、チカちゃんが「おお」と思った性質がひとつ。できあがった形は、コードと数値として残るんです。WIDTH = 40.0 のところを「45mmに変えて」とお願いすれば、数値が変わって、形が作り直される。作り直しが怖くない。コピーも、差分も、やり直しもできる。これが、あとで効いてきます。

形の確認は、ビューアで。Claude CodeやCodexのアプリでは、モデルが会話の中にカードとして出てきて、ぐりぐり回して眺められます。ターミナル中心の環境では、ブラウザで開くリンクが返ってきます(手動で開きたいときは cadgen viewer コマンドで)。

部品づくりの、その先へ

text-to-cadの本領は、モデリングの「あと」にもあります。同梱されているスキルを並べると、こんな感じです。

  • 作る・直す —— CAD(モデルの作成・編集)、DXF(型紙やガスケットなどの2D図面)
  • 部品を探す —— step.parts(ネジ・ベアリング・モーター・コネクタなどの市販部品を、STEPカタログから検索)
  • 図面にする —— Engineering Drawing(寸法・隠れ線・穴注記つきの図面PDF)
  • 作る前に疑う —— DFM(板金・CNC・射出成形の観点でレビュー)、DfAM Check(3Dプリントの壁厚・オーバーハング・サポート・置き方を測る)、SendCutSend(レーザー切断サービスへ上げる前のチェック)
  • 機械に渡す —— G-code(OrcaSlicerと自分のプリンタ設定でスライス)、Bambu Labs(Bambu Labのプリンタへ送信)
  • ロボットへ —— URDF / SRDF / SDF(ロボットの構造ファイルと、シミュレーション用のモデル)

たとえば3Dプリントの部品なら、「作る → 印刷できるか測る → スライスする → プリンタに送る」までが、ぜんぶ会話の中だけでつながっていきます。指示はいつもどおり、日本語でどうぞ。

チカちゃんの見立て——「絵を描くAI」ではなく「設計を書くAI」

ここで、ちょっと立ち止まって考えてみます。

これまでの「text-to-3D」って、どちらかというと画像生成の親戚でした。それっぽい立体を、それっぽく作る。でも、text-to-cadがやっているのは、それとは別の仕事なんです。幾何を、コードとして書く。エージェントが引き受けたのは、CAD操作の職人芸そのものではなく、その下の層——図形を組み立てる計算の部分です。

これ、何が嬉しいんでしょう。

CADの操作って、長いこと「身体の記憶」の世界でした。マウスの動かし方、面取りのかけ方、押し出しのコツ。教わるしかなくて、引き継ぐのが大変な知識です。でも、形がコードで書かれるとどうなるか。読める、測れる、差分が見える、やり直せるようになります。

AIが作ったものって、どうしても「ブラックボックスから出てきた答え」になりがちです。でもこの道具の場合は、途中に読める段がある。日本語 → エージェント → Python → 形。段の数だけ、疑える場所も増えているんです。チカちゃんは、そこがとてもいいなと思いました。

そして、もうひとつ。裏返すとこれは、設計の仕事が「操作」から「言語化」へ移りはじめた、ということでもあります。言葉にできない寸法は、形になりません。「いい感じに」は、通じません。あなたの頭の中のもやもやを、数値と条件に翻訳する仕事。それって、AI時代のいろんな仕事で起きていることの、ミニチュア版みたいですよね。

でも、ちょっと待って——気をつけたいこと

ここからは、いつもの「でも、ちょっと待って」の時間です。今回、チカちゃんは特にこのあたりを先に読んでほしいと思っています。

  • それっぽさと、正しさは別物です。 3Dの形は、わりと簡単にそれっぽくなります。でも、公差、強度、材料、安全性は別の話。同梱のDFM/DfAMチェックも、プロジェクト自身が「自動の製造認証エンジンではなく、ガイド付きレビューです」と明記しています。製造や実機投入の前に、設計検証と寸法確認を人の手で行ってください。人や財産に関わる部品(構造物・乗り物・圧力・医療など)は、専門のエンジニアのレビューなしに作らないように
  • Windows 11には落とし穴があります。 Smart App Controlという機能が、CADカーネルの署名なしモジュールをブロックして、ImportError: DLL load failed while importing OCP で失敗することがあります。回避策は、Smart App Controlを切る(ただし、一度切るとWindowsの再インストールまで戻せない仕様なので、よく確認してから)か、WSLの上で動かすこと。cadgen doctor コマンドが、この問題の診断もしてくれます
  • テレメトリはデフォルトでONです。 匿名のランダムIDつきの利用統計とクラッシュレポートを送ります。ファイル名・パス・ファイルの中身・プロンプトは含まれない、と明記されています。気になる人は先に切っておくのが吉: uvx cadgen telemetry off(エージェントに「テレメトリを切って」と頼んでもOK)。オフにすると、送信済みのデータの削除も行われる、と説明されています。オフラインでも動きます
  • 動きが速いプロジェクトです。 リリースが頻繁で、スキルもコマンドも増えていきます。この記事のコマンドが古くなっている可能性もあるので、導入前にリポジトリのREADMEで最終確認を。バージョンはピン留め(例: cadgen==0.7.21)されていて、その番号が「いま入る版」の目印になります。古いバージョンはuvのキャッシュに残っていくので、掃除したいときは uv cache prune を

どんな人に向いている?

  • 3Dプリンタはあるけど、CADは諦めていた人——本命です。言葉から始められるので、最初の壁がかなり低くなります
  • メカ工作・ロボットをやっている人——URDFやシミュレーション用モデルまで出てくるので、ロボット開発の下ごしらえにも
  • エージェントの仕事を増やしたい人——「コードを書く」「調べる」の次は「ものを設計する」。エージェントの肩書きが、またひとつ増えます
  • 教育の現場の人——寸法を言葉にする練習として、いい題材だと思います。「いい感じの箱」が通じない世界で、言葉を磨く。これ、設計の本質です

逆に、法規適合や安全保証が必要な製品設計の「代替」にはなりません。あくまで、人の設計を助ける道具です。そこは約束事ではなく、道具の性質です。

まとめ——形ができても、決めるのはまだ人間

「言葉から部品が作れる」——これはたぶん、これから何度も聞くようになる話の、いちばん最初の実例のひとつです。

面白いのは、text-to-cadが「魔法で形を出す」のではなく、「読めるコードを経由して形を出す」ようにできていること。速さより、確かめられることを選んでいる。AIに任せる範囲が広がるほど、私たちはどこで確かめるかを設計しなきゃいけない——この道具は、その問いを小さいサイズで先に見せてくれている気がします。

形ができても、責任はまだ人間の側にあります。それは制限ではなくて、たぶん、これからの仕事の形なんですよね。

さて、あなたなら、何を言葉にしてみたいですか?


参考URL


本記事は公開情報をもとにした個人的な技術メモです。text-to-cadは活発に開発中のプロジェクトで、インストール方法・コマンド・スキル構成・バージョン・テレメトリの仕様は変わります。導入前に公式リポジトリのREADMEとプライバシーポリシーをご確認ください。スター数などは執筆時点(2026年10月16日)の表示に基づきます。生成されたCADデータは、設計検証・寸法確認なしに製造・実機投入しないでください。DFM/DfAMのレビューは製造の保証ではありません。Windows 11のSmart App Controlの変更は環境への影響が大きいので、よく調べてからどうぞ。

思索は冒険です。今日の話も、その入口のひとつでした。

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