言葉から、部品をつくる——エージェントにCADの力を与える『text-to-cad』の使い方
自然言語や画像から、寸法を持った本物のCADデータ(STEP)を作るエージェント向けプラグイン『text-to-cad』。導入手順から部品づくり、製造チェックの流れ、気をつけたい点までを整理します。
📑 目次
ふむふむ。今週のGitHubトレンドを眺めていて、チカちゃんは変な一文に足を止めました。
Give your agent CAD superpowers.
あなたのエージェントに、CADの「超能力」を。——そう書いてある。CADですよ、CAD。3Dプリンタで何かを作ろうとすると、まず操作を覚えるところで心が折れがちな、あの世界です。
それが今、GitHubで2万スターを超えて、今週の週次トレンドにも載っている。名前は text-to-cad(テキスト・トゥ・キャド)。言葉でお願いすると、エージェントが「本物のCADデータ」を作ってくれる道具です。
ちょっと待って。「またAIが絵を描いた、の話でしょ?」と思いましたよね。いえいえ、今回出てくるのは絵ではなく、STEPというCADの標準データ。工場も3Dプリンタも読める、寸法を持ったデータなんです。ここが今日のいちばん面白いところです。
というわけで今日は、text-to-cadで何ができるのか、どうやって入れるのか、そしてどこで一回立ち止まるべきなのか。順番に見ていきましょう。
text-to-cadとは——「言葉 → コード → 形」の翻訳機
text-to-cadは、エージェント用のプラグインです。中身はスキル集になっていて、単体のアプリではありません。Claude Code、Codex、Cursor、Gemini、Grok——おなじみのエージェントたちに「取り付ける」と、その子がCADの仕事を引き受けてくれるようになります。
(スキルというのは、エージェントに配る「手順書セット」のこと。必要になったとき、エージェントが自分で開いて使います)
できることを整理すると、こうです。
- 3Dモデルを STEP(メイン)・STL・3MF・GLB として生成する
- 製造のためのチェック(DFM)をする
- 図面(Engineering Drawing)を作る
- 3Dプリント・板金・CNCの製造サービスにつなぐ
STEPは寸法を持った「本物のCADデータ」、STLと3MFは3Dプリント向け、GLBは3D表示向けの形式です。……と説明しても固いので、チカちゃん流に言い直すと——図工の時間に見せてくれる作品ではなく、工場に渡せる設計図を作る道具、です。
中身も面白いんです。土台になっているのは build123d という、Pythonで図形を「コードとして」書くためのライブラリと、産業用CADエンジンの Open CASCADE。エージェントはCADソフトの画面をポチポチするのではなく、Pythonのコードを書くことで部品を作ります。ここ、あとでまた戻ってきます。
作業はローカルで動き、データは手元に残ります。ライセンスはMIT。2026年4月に公開されてから、開発はとても活発で、今週もトレンドに入り続けている最中の道具です。
インストール——必要なのは、uvと、言葉だけ
準備は、uvをひとつだけ
text-to-cadの心臓部(cadgen という実行エンジン)は、uv というPython用のツールランナーを通して動きます。まず、入っているか確認してください。
uv --version
入っていなければ、macOSならHomebrewで一行です。
brew install uv
Homebrewを使っていない場合は、公式のインストーラーでも入ります。
curl -LsSf https://astral.sh/uv/install.sh | sh
そのほかの環境向けの方法は、uvの公式ドキュメントにまとまっています。あと、プラグインに対応していないエージェントにスキルだけを入れるルートでは、npx を使うのでNode.js 20以降も必要です。ふむふむ、ここまでは準備体操ですね。
インストール:推奨は「エージェントに頼む」
いちばんtext-to-cadらしいインストール方法が、READMEの冒頭に書いてあります。エージェントに、このメッセージを送るだけ。
Install text-to-cad from https://github.com/earthtojake/text-to-cad
エージェントが自分でリポジトリを読みに行って、自分の環境に道具を取り付けてくれる。数年前なら変な光景ですけど、2026年はこれがふつうになりました。チカちゃんは、この一文だけで、この道具のことをちょっと好きになりました。
手動で入れる場合の早見表
手元で確認しながら入れたい人向けに、主要エージェントのコマンドを並べておきます。リポジトリの記載そのままです。
| エージェント | インストール |
|---|---|
| Claude Code | claude plugin marketplace add earthtojake/text-to-cad#latest → claude plugin install text-to-cad@earthtojake |
| Codex | codex plugin marketplace add earthtojake/text-to-cad --ref latest → codex plugin add text-to-cad@earthtojake |
| Cursor | git clone --depth 1 --branch latest https://github.com/earthtojake/text-to-cad ~/.cursor/plugins/local/text-to-cad |
| Gemini CLI | gemini extensions install https://github.com/earthtojake/text-to-cad --ref latest --consent --auto-update |
| Grok Build | grok plugin install earthtojake/text-to-cad@latest --trust → grok plugin enable text-to-cad |
| その他のエージェント | npx skills add earthtojake/text-to-cad#latest |
読み方のポイントを、いくつか。
- コマンドの
#latestや--ref latestは「リリース済みの版」を指す指定です。省くと開発中のmainが入ります。最初はlatestでどうぞ - CursorとGrok Buildは、Claude Codeに入れたプラグインも読み込んでくれます。すでにClaude Codeに入れてあるなら、個別の作業は不要です
- 同じアプリに「プラグイン」と「スキル集」の両方は入れないこと。 二重に入れるとスキルが2つずつになってしまうので
- インストール後の初回起動では、CADのランタイムをネットからダウンロードします。初回だけ、ネット接続が必要です(
cadgen本体もuvが自動で取ってきてくれるので、Python環境を自分で整える必要はありません)
Claude Desktop(デスクトップアプリ)の場合は、MCPサーバーとして設定に追記する方式です。アプリの設定画面(Settings > Developer > Edit Config)で開いて、こんなふうに足して、再起動します。
{
"mcpServers": {
"cad": {
"command": "uvx",
"args": ["--no-config", "--managed-python", "--python", "3.13", "--from", "cadgen==0.7.21", "cadgen", "mcp"],
"env": {"CADGEN_INSTALL_CHANNEL": "claude-desktop"}
}
}
}
バージョン番号(上の例では 0.7.21)は執筆時点のもの。更新するときは、この数字を最新リリースに書き換えます。もし「uvxが見つからない」と言われたら、which uvx で調べたフルパスに置き換えてください。
使い方——言葉で注文して、コードで直す
さて、ここからが本題です。使い方は、拍子抜けするほどシンプル。エージェントに日本語で注文するだけです。
たとえば、こんなふうに。
「3Dプリント用のケーブルクリップを作って。ケーブルは直径6mm、結束バンドが通る穴つき。PLAで印刷する前提で、壁は厚めに」
するとエージェントは、足りない寸法を聞き返したり、置いた仮定を記録したりしながら、src/ の中にモデルを書いていきます。モデルは、こんなふうな、ただのPythonスクリプトです(リポジトリの例から)。
from cadgen import build123d as bd
from cadgen import step
WIDTH = 40.0
@step(out="../STEP/bracket.step")
def bracket():
body = bd.Box(WIDTH, 20, 6)
body.label = "bracket"
return body
if __name__ == "__main__":
bracket()
エージェントがこれを実行すると、STEP/bracket.step が生まれます。あなたはコードを読めなくても大丈夫。このへんは、まるごとエージェントの仕事です。
ここで、チカちゃんが「おお」と思った性質がひとつ。できあがった形は、コードと数値として残るんです。WIDTH = 40.0 のところを「45mmに変えて」とお願いすれば、数値が変わって、形が作り直される。作り直しが怖くない。コピーも、差分も、やり直しもできる。これが、あとで効いてきます。
形の確認は、ビューアで。Claude CodeやCodexのアプリでは、モデルが会話の中にカードとして出てきて、ぐりぐり回して眺められます。ターミナル中心の環境では、ブラウザで開くリンクが返ってきます(手動で開きたいときは cadgen viewer コマンドで)。
部品づくりの、その先へ
text-to-cadの本領は、モデリングの「あと」にもあります。同梱されているスキルを並べると、こんな感じです。
- 作る・直す ——
CAD(モデルの作成・編集)、DXF(型紙やガスケットなどの2D図面) - 部品を探す ——
step.parts(ネジ・ベアリング・モーター・コネクタなどの市販部品を、STEPカタログから検索) - 図面にする ——
Engineering Drawing(寸法・隠れ線・穴注記つきの図面PDF) - 作る前に疑う ——
DFM(板金・CNC・射出成形の観点でレビュー)、DfAM Check(3Dプリントの壁厚・オーバーハング・サポート・置き方を測る)、SendCutSend(レーザー切断サービスへ上げる前のチェック) - 機械に渡す ——
G-code(OrcaSlicerと自分のプリンタ設定でスライス)、Bambu Labs(Bambu Labのプリンタへ送信) - ロボットへ ——
URDF/SRDF/SDF(ロボットの構造ファイルと、シミュレーション用のモデル)
たとえば3Dプリントの部品なら、「作る → 印刷できるか測る → スライスする → プリンタに送る」までが、ぜんぶ会話の中だけでつながっていきます。指示はいつもどおり、日本語でどうぞ。
チカちゃんの見立て——「絵を描くAI」ではなく「設計を書くAI」
ここで、ちょっと立ち止まって考えてみます。
これまでの「text-to-3D」って、どちらかというと画像生成の親戚でした。それっぽい立体を、それっぽく作る。でも、text-to-cadがやっているのは、それとは別の仕事なんです。幾何を、コードとして書く。エージェントが引き受けたのは、CAD操作の職人芸そのものではなく、その下の層——図形を組み立てる計算の部分です。
これ、何が嬉しいんでしょう。
CADの操作って、長いこと「身体の記憶」の世界でした。マウスの動かし方、面取りのかけ方、押し出しのコツ。教わるしかなくて、引き継ぐのが大変な知識です。でも、形がコードで書かれるとどうなるか。読める、測れる、差分が見える、やり直せるようになります。
AIが作ったものって、どうしても「ブラックボックスから出てきた答え」になりがちです。でもこの道具の場合は、途中に読める段がある。日本語 → エージェント → Python → 形。段の数だけ、疑える場所も増えているんです。チカちゃんは、そこがとてもいいなと思いました。
そして、もうひとつ。裏返すとこれは、設計の仕事が「操作」から「言語化」へ移りはじめた、ということでもあります。言葉にできない寸法は、形になりません。「いい感じに」は、通じません。あなたの頭の中のもやもやを、数値と条件に翻訳する仕事。それって、AI時代のいろんな仕事で起きていることの、ミニチュア版みたいですよね。
でも、ちょっと待って——気をつけたいこと
ここからは、いつもの「でも、ちょっと待って」の時間です。今回、チカちゃんは特にこのあたりを先に読んでほしいと思っています。
- それっぽさと、正しさは別物です。 3Dの形は、わりと簡単にそれっぽくなります。でも、公差、強度、材料、安全性は別の話。同梱のDFM/DfAMチェックも、プロジェクト自身が「自動の製造認証エンジンではなく、ガイド付きレビューです」と明記しています。製造や実機投入の前に、設計検証と寸法確認を人の手で行ってください。人や財産に関わる部品(構造物・乗り物・圧力・医療など)は、専門のエンジニアのレビューなしに作らないように
- Windows 11には落とし穴があります。 Smart App Controlという機能が、CADカーネルの署名なしモジュールをブロックして、
ImportError: DLL load failed while importing OCPで失敗することがあります。回避策は、Smart App Controlを切る(ただし、一度切るとWindowsの再インストールまで戻せない仕様なので、よく確認してから)か、WSLの上で動かすこと。cadgen doctorコマンドが、この問題の診断もしてくれます - テレメトリはデフォルトでONです。 匿名のランダムIDつきの利用統計とクラッシュレポートを送ります。ファイル名・パス・ファイルの中身・プロンプトは含まれない、と明記されています。気になる人は先に切っておくのが吉:
uvx cadgen telemetry off(エージェントに「テレメトリを切って」と頼んでもOK)。オフにすると、送信済みのデータの削除も行われる、と説明されています。オフラインでも動きます - 動きが速いプロジェクトです。 リリースが頻繁で、スキルもコマンドも増えていきます。この記事のコマンドが古くなっている可能性もあるので、導入前にリポジトリのREADMEで最終確認を。バージョンはピン留め(例:
cadgen==0.7.21)されていて、その番号が「いま入る版」の目印になります。古いバージョンはuvのキャッシュに残っていくので、掃除したいときはuv cache pruneを
どんな人に向いている?
- 3Dプリンタはあるけど、CADは諦めていた人——本命です。言葉から始められるので、最初の壁がかなり低くなります
- メカ工作・ロボットをやっている人——URDFやシミュレーション用モデルまで出てくるので、ロボット開発の下ごしらえにも
- エージェントの仕事を増やしたい人——「コードを書く」「調べる」の次は「ものを設計する」。エージェントの肩書きが、またひとつ増えます
- 教育の現場の人——寸法を言葉にする練習として、いい題材だと思います。「いい感じの箱」が通じない世界で、言葉を磨く。これ、設計の本質です
逆に、法規適合や安全保証が必要な製品設計の「代替」にはなりません。あくまで、人の設計を助ける道具です。そこは約束事ではなく、道具の性質です。
まとめ——形ができても、決めるのはまだ人間
「言葉から部品が作れる」——これはたぶん、これから何度も聞くようになる話の、いちばん最初の実例のひとつです。
面白いのは、text-to-cadが「魔法で形を出す」のではなく、「読めるコードを経由して形を出す」ようにできていること。速さより、確かめられることを選んでいる。AIに任せる範囲が広がるほど、私たちはどこで確かめるかを設計しなきゃいけない——この道具は、その問いを小さいサイズで先に見せてくれている気がします。
形ができても、責任はまだ人間の側にあります。それは制限ではなくて、たぶん、これからの仕事の形なんですよね。
さて、あなたなら、何を言葉にしてみたいですか?
参考URL
- earthtojake/text-to-cad リポジトリ → https://github.com/earthtojake/text-to-cad
- text-to-cad 公式サイト → https://www.texttocad.dev
- プライバシーポリシー → https://www.texttocad.dev/privacy-policy
- cadgen(PyPI) → https://pypi.org/project/cadgen/
- build123d → https://github.com/gumyr/build123d
- Open CASCADE → https://dev.opencascade.org
- uv インストール手順 → https://docs.astral.sh/uv/getting-started/installation/
- step.parts(部品カタログ) → https://www.step.parts
- skills.sh(Agent Skillsディレクトリ) → https://skills.sh
- GitHub Trending(週次) → https://github.com/trending?since=weekly
本記事は公開情報をもとにした個人的な技術メモです。text-to-cadは活発に開発中のプロジェクトで、インストール方法・コマンド・スキル構成・バージョン・テレメトリの仕様は変わります。導入前に公式リポジトリのREADMEとプライバシーポリシーをご確認ください。スター数などは執筆時点(2026年10月16日)の表示に基づきます。生成されたCADデータは、設計検証・寸法確認なしに製造・実機投入しないでください。DFM/DfAMのレビューは製造の保証ではありません。Windows 11のSmart App Controlの変更は環境への影響が大きいので、よく調べてからどうぞ。
思索は冒険です。今日の話も、その入口のひとつでした。
- インターネット上のツールは第三者が提供するものです。開発工程や配布経路を悪用した攻撃(サプライチェーン攻撃)が仕掛けられる可能性もゼロではありません。ご利用の際は公式リポジトリの情報をご確認いただき、自己責任でお使いください。
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