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安全に開き、静かに書く——Hazakura Editorが「持たない」と決めたこと

macOS向けMarkdownエディタ Hazakura Editor。読む・書く・比べる。あえて多くを持たないことで、AI時代のテキスト確認に静かな余白をつくります。

カテゴリー: ツール · 制作 | 公開: 2026年6月19日

macOS向けMarkdownエディタ Hazakura Editor。読む・書く・比べる。あえて多くを持たないことで、AI時代のテキスト確認に静かな余白をつくります。

📑 目次

ふむふむ。最近、こんなことを思ったんです。

テキストエディタって、増えすぎてません?

VSCode、Zed、Cursor、Windsurf、Neovim、Obsidian、Notion、Craft…… どれも賢くて、どれも多機能で、どれも「あれもできます、これもできます」と語りかけてくる。

でも、ふと考えたんですよね。 「ただ README を読みたいだけ」のとき、「メモをちょっと書きたいだけ」のとき、「AIが触ったファイルを、実行せずにそっと確認したいだけ」のとき——そこに、フル装備の IDE って、ちょっと騒がしくない?

というわけで今回は、つい先日リリースされたばかりの Hazakura Editor を紹介します。 葉桜ラボが「持たない」と決めた、小さなテキスト作業場の話です。

これは何か

Hazakura Editor は、macOS 向けの Markdown エディタです。

でも「Markdown エディタ」って言ってしまうと、ちょっと語弊がある。 Obsidian や Typora のような、ノート管理やナレッジベースを想像されると、たぶん違う。

じゃあ何かというと——

メモ帳より少しだけ賢く、IDE よりずっと静かに。

それだけを目指した、ローカルのテキスト作業場です。

技術スタックは Tauri + CodeMirror 6 + React。 Rust の安全なレイヤーの上に、軽量なエディタ面を置いています。 App Store から入手できる一般版と、GitHub で試せる Developer Preview 版の2つの配布チャネルがあります。

三つの窓、静かに並んで

Hazakura Editor の画面は、三つのモードで構成されています。

モードなにをする窓か
編集モードMarkdown を直接書く。コード実行なし、補完しすぎない、ただ書くことに集中する編集面
Lモード(えるモード)WYSIWYG 表示。書いた文章を「読み手の目線」で眺める、確認のための窓
確認(差分)保存前に、ディスクとエディタの差分を左右に並べる。採用も、戻すことも、明示的に

この三つが、ひとつのウィンドウの中で静かに切り替わる。 「編集」と「確認」のあいだを軽やかに行き来できるのが、このエディタの中心にある体験です。

個人的に、とても好きなのが Lモードです。 書いているときは Markdown のソースに向き合って、でも「いまどう見えるかな」と思ったら、ぱっと Lモードに切り替える。 構文の装飾が解かれて、読み手の目で自分の文章を眺められる。

これって、ちょっとした「視点の切り替え」なんですよね。 書く自分と、読む自分のあいだに、ワンクッション置ける感じ。

Lモード —— 書いた文章を読み手の目線で眺める確認の窓

確認モード —— 保存前にディスクとエディタの差分を左右に並べる

編集モード —— Markdownを直接書く、集中のための編集面

「持たない」という設計

Hazakura Editor のいちばん面白いところは、「できること」よりも「あえて持たないこと」に設計の重心があるところです。

具体的には、こういうものを最初から持たないと決めています:

  • コードを実行しない —— プロジェクトを開いても、ビルドもスクリプト実行もされない
  • 補完しすぎない —— 勝手に文章を完成させたり、自動で形を変えたりしない
  • 勝手に変えない —— 自動保存・自動適用は目指さず、保存は常に明示的
  • LSP を持たない —— コード補完も、型チェックも、リアルタイム診断もない
  • Git クライアントを持たない —— コミットも、ブランチも、履歴も、この中では扱わない
  • ターミナル統合を持たない —— シェルもコマンド実行も、エディタの中では開かない

……ここまで書くと、「それってただ機能が少ないだけでは?」と思われるかもしれません。

でも、ここが面白いと思うんです。 「持たない」ことには、積極的な意味がある。

たとえば——

信頼しきれないプロジェクトのフォルダを開くとき。 誰かが共有してくれたリポジトリの README を確認したいだけのとき。 AI エージェントが触ったファイルを「何が変わったか」だけ見たいとき。

そういう場面で、コードを実行しない。ターミナルを開かない。勝手に保存しない。 その制約は、万能ではないけれど、「読む」「比べる」ための信頼境界になる。

機能を足して便利にする方向とは、まったく逆のベクトル。 でもそれが、いまの AI 時代に意外とフィットする道具のあり方なんじゃないか——というのが、Hazakura Editor の立っている場所です。

「でも、IDE でよくない?」への応答

ここで一回、疑ってみましょう。

「コード書くなら IDE 使えばよくない?」 「Markdown だけなら Obsidian の方が多機能では?」

そのとおりです。VSCode も Obsidian も、素晴らしい道具です。 Hazakura Editor はそれらの代替を目指していません。

目指しているのは、別の使い道——

  • IDE を立ち上げるほどでもない、テキストを「読む」ための一拍
  • AI が触ったファイルを実行せずに確認する、そのための安全な場所
  • 「書く」と「読む」と「比べる」、その三つだけでいいという潔さ

メモ帳だと心もとない。でも IDE だと重たい。 そのあいだに、ちょうど収まる道具を探していた——それが Hazakura Editor の出発点です。

もうひとつ、Agent Workbench という実験的なオプションもあります。

補足:Developer Preview 版について GitHub で配布される Developer Preview 版には、Codex や OpenCode、Claude などの外部 AI エージェントを CLI 経由で呼び出せる「エージェント作業台」モードが含まれる場合があります。これは App Store 版の基本体験とは別の信頼境界として扱われ、明示的にオンにしないと動きません。まず試すなら、App Store 版の「読む・書く・比べる」に集中した体験からがおすすめです。

つまり—— 「AI が便利なのは認める。でも、勝手に動かれるのは困る」 という感覚に、正面から向き合っているんです。

「書く」という行為の、いまとこれから

ここからは、ちょっと哲学のほうに寄り道します。

テキストエディタの話をしていると、いつのまにか「書く」という行為そのものの話になってくる。

いま、AI はどんどん「書く」ことに入り込んできています。 補完、生成、リライト、要約——どれも便利で、どれも強力。

でもそのぶん、「自分で書く」ことと「AI が書いたものを受け入れる」ことの境界が、どんどんあいまいになっている。

ここに、ちょっとした危うさを感じます。 AI が提案した文章を、よく確認せずに保存してしまう。 気づいたら、自分の言葉と AI の言葉の境目がわからなくなっている。

Hazakura Editor の「差分で確かめる」という設計は、この感覚への応答でもあるんですよね。

変える前に、比べる。保存する前に、自分で選ぶ。

この一行に、このエディタの設計思想がぜんぶ詰まっています。 自動化や効率化の波にのまれる前に、一拍おいて、自分の目で見る。 そのための場所を、そっと用意している。

これは、AI 時代の「書く」ことと、どう付き合うか——という問いへの、ひとつの小さな提案です。

まとめ

Hazakura Editor は、万能ではありません。 できることは少ないし、対応する作業も限られています。

でも、だからこそ静かに開ける。 テキストを読む。書く。比べる。 その一拍に集中できる。

「持たないこと」が、確認のための余白になる。 Hazakura Editor は、そんな逆説を小さくかたちにした道具です。

App Store 版と GitHub Developer Preview 版では、提供される機能が異なります。まずは App Store の最新情報を確認し、自分の用途に合う形で試してみてください。

思索は冒険です。 でも、その冒険の道具は、静かなほうがいい。 そんな話でした。

参考URL

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