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book-to-skill——技術書PDFを、エージェントが使う『スキル』に変える

週次トレンドで伸びたbook-to-skill。PDFや社内docsをAgent Skills形式に変換し、章単位でオンデマンド参照する手順と注意点を日本語で整理します。

カテゴリー: AI · ツール · How-to · エージェント · スキル | 公開: 2026年8月7日 | 読了目安: 約13分

週次トレンドで伸びたbook-to-skill。PDFや社内docsをAgent Skills形式に変換し、章単位でオンデマンド参照する手順と注意点を日本語で整理します。

📑 目次

ふむふむ。いい技術書を買って、一度は読んだ。なのに三か月後、「第7章って何だったっけ?」になる——ありません?

チカちゃん的には、これかなりあるあるです。PDFを開いてもページ一覧しか出ない。エージェントに聞くと、学習データのぼんやりした記憶で答えてくる。自分でノートを取ると、200行のメモができて二度と開かない。

そこに、GitHubの週次トレンドで勢いよく上がってきたのが book-to-skillvirgiliojr94/book-to-skill)です。ひと言でいうと、手元の本やドキュメントを、コーディングエージェントがオンデマンドで読めるスキルに変換する道具。執筆時点でGitHubスターは約17,600。ライセンスはMIT。対応ホストは Claude Code / GitHub Copilot CLI / Amp など、Agent Skills 標準を読むクライアントです。

「要約ツール」じゃありません。公式が繰り返しているのはここ——structure, not a summary。著者の枠組み・判断ルール・アンチパターンを、スキルとして使える形に蒸留する。今日はその入れ方から、最初の1冊の変換、ハマりどころまで歩いてみます。

本記事は公開情報をもとにした個人的な技術メモです。第三者ツール・AIサービス・モデルの仕様、料金、利用条件、安全性は変わる可能性があります。導入前に公式ドキュメント、ライセンス、利用規約、商用利用条件、データ送信先を確認してください。業務環境や秘密情報を含む環境では、隔離環境で検証してから利用することをおすすめします。著作権のある書籍を処理する場合は、自分で正当に所持しているコピーに限り、生成スキルの再配布は避けてください。

book-to-skill は何をするのか——30秒でつかむ

流れは3ステップです。

  1. 指す —— /book-to-skill ./my-book.pdf(またはフォルダ、glob、複数ファイル)
  2. 蒸留する —— 抽出スクリプトがテキスト化し、エージェントが章構成・フレームワーク・用語を整理してスキルを書く
  3. 使う —— /my-book replication のように聞くと、必要な章ファイルだけ読んで答える

生成されるのはだいたいこんな構成です(公式READMEの目安トークン量)。

ファイル役割だいたいのサイズ
SKILL.md中核のメンタルモデル+章インデックス約4,000トークン
chapters/ch01-*.md章ごとの要約(必要なときだけ読む)各約1,000トークン
glossary.md用語集(章参照つき)約1,500トークン
patterns.md技法・アルゴリズム・パターン約2,000トークン
cheatsheet.md判断表・クイックリファレンス約1,000トークン

ポイントは 章ファイルはオンデマンド なこと。毎回本全体をコンテキストに流し込まない。公式の実測では、1問に答えるときのコンテキスト投入量が「本まるごとdump」より 24×〜51×少ない(Think Python 2 / Working Backwards / AI Engineering での測定。手法は docs/PERFORMANCE.md)。

チカちゃん的には、ここが面白い。大きなコンテキスト窓は「全部載せることを可能にする」だけで、「全部載せることが賢い」わけじゃない、という話なんですよね。

PDF dump / RAG / NotebookLM と何が違うの?

ここ、いちばん誤解しやすいので一度並べます。

やり方いつコストを払うか何が返るか向きやすい仕事
コンテキストにPDFを貼る会話の毎ターン生テキストの再解釈二度と使わない一回限りの読み
RAGクエリ時に検索類似チャンク本棚全体から「Xに触れた箇所」
NotebookLM 等ノートブック側横断Q&A多数の本を横断検索
book-to-skill変換時に一度名前付きフレームワーク・判断ルール1冊(または密な束)を仕事中に適用

公式FAQの言い方がうまいです。RAGは 「クエリに近いチャンクはここ」。スキルは 「この著者が何年もかけて作った枠組みが、使える形でここ」

広い棚を索引化するならRAG。一本の背表紙をマスターして、コーディング中に手を伸ばすなら book-to-skill。補完関係であって、どっちが勝つ試合でもない。

事前確認——動かす前に知っておきたいこと

  • 必要なもの: 対応エージェント(Claude Code / Copilot CLI / Amp など)と、ローカルで動く Python 3
  • 入力形式: PDF, EPUB, DOCX, TXT, Markdown, reStructuredText, AsciiDoc, HTML, RTF, MOBI/AZW/AZW3(後者はCalibreの ebook-convert が必要)
  • 二系統のインストールを混同しない(公式INSTALLが強調):
    • エージェントスキルgit clone を skills フォルダへ。/book-to-skill が使える本丸
    • スタンドアロンCLIpip install book-to-skill抽出エンジンだけ。スラッシュコマンドは登録されない
  • データ: 抽出はローカル。ただしクラウドLLMのエージェントなら、生成フェーズでテキストはプロバイダのデータ条件に従う(普通のプロンプトと同じ)
  • 著作権: ツール本体は書籍を同梱しない。自分が正当に持つコピーを処理する前提。第三者著作物の生成スキルを公開・配布するのは避け、個人利用メモとして扱う

インストール——ホスト別に置く場所を決める

Claude Code(いちばんよく見る経路)

git clone https://github.com/virgiliojr94/book-to-skill.git ~/.claude/skills/book-to-skill

セッション内で次のように依頼するだけでも可、と公式は書いています。

Install book-to-skill: https://raw.githubusercontent.com/virgiliojr94/book-to-skill/master/SKILL.md

ただし公式INSTALLは、モジュラーな抽出エンジン一式を確実に取るなら git clone 推奨と明記しています。チカちゃん的にも、ここは clone 一択でいいと思います。

GitHub Copilot CLI

git clone https://github.com/virgiliojr94/book-to-skill.git ~/.copilot/skills/book-to-skill
# セッション内で:
/skills reload
/skills info book-to-skill

クロスエージェント(Copilot と Amp の両方が見る場所)

git clone https://github.com/virgiliojr94/book-to-skill.git ~/.agents/skills/book-to-skill

抽出の健全性チェック(おすすめ)

clone したあと、依存が足りているか一発で確認できます。

python3 ~/.claude/skills/book-to-skill/scripts/extract.py --check
# パスはホストに合わせて ~/.copilot/... や ~/.agents/... に読み替え

足りない抽出器があれば、入れるコマンドまで表示してくれます。ここを飛ばすと、技術書なのに構造が全部潰れたテキストで進んでしまう——地味に痛い罠です。

スタンドアロンCLI(任意)

pip install "book-to-skill[pdf,epub,docx]"
book-to-skill --check
book-to-skill ~/path/to/book.pdf --mode text

繰り返しますが、これは 抽出だけ。エージェントの /book-to-skill フロー(分析→スキル生成)まではやりません。

最初の1冊——変換フローを手で追う

ここでは Claude Code 想定で書きます。置き場所は上の表に合わせて読み替えてください。

1. 変換コマンドを投げる

/book-to-skill ~/Downloads/your-book.pdf
# スキル名を自分で決めるなら:
/book-to-skill ~/Downloads/your-book.pdf my-book-slug

フォルダや複数ソースも公式に対応しています。

# docs フォルダごと1スキルに
/book-to-skill ~/workspace/project-docs/ project-knowledge

# 論文とメモを束ねる
/book-to-skill ~/papers/a.pdf ~/notes/export.txt unified-research

# 既存スキルに新しい資料を fold-in
/book-to-skill ~/articles/new-paper.pdf ~/.claude/skills/project-knowledge

2. 「技術寄り or 文章寄り?」に答える

抽出の前に、本の種類を聞かれます。

選択向き主な抽出器速度感
Technicalコード・表・数式が多いDoclingおおよそ1.5秒/ページ
Text-heavy散文中心pdftotext → pypdf → pdfminerほぼ即時
Not sure迷ったとき速い方(text)品質が足りなければ警告

公式の103ページ技術PDF比較では、pdftotext が0.1秒で表0・コード0、Docling が164秒で表48・コードブロック36、という実測があります。プログラミング本なら technical。ビジネス書の散文なら text。ここを間違えると「速いけど中身が平ら」になりがち。

3. コスト見積もりを見てから進む

抽出後、生成に入る前にトークン見積もりが出ます。ここで一度止まれるのが親切設計。

公式のワンパス変換コスト目安(Claude Sonnet 4.5 を $3 / $15 per MTok と置いた推定。モデル名と単価は変わるので、その日の料金で掛け直すこと):

入力出力おおよそ
Think Python 2(244ページ)155K28K約 $0.88
Working Backwards(371ページ)228K19K約 $0.96
Pro Git(501ページ)298K23K約 $1.23

ざっくり 1冊あたり約1ドル前後を一度払うイメージ。その代わり、毎回PDFを全文投入するコストを毎回払わなくてよくなる——公式の「amortization(償却)」の話です。

不安なら、ここで analyze only にして分析レポートだけ見るモードもあります。

4. できあがったスキルを使う

/designing-data-intensive-apps                  # 中核の枠組みを読む
/designing-data-intensive-apps replication      # トピックで章を探す
/designing-data-intensive-apps ch05             # 第5章に潜る
/designing-data-intensive-apps "what chapters do you have?"

Copilot CLI では生成直後に /skills reload が必要なことがあります。Claude Code / Amp は次セッションで拾う、と公式USAGEにあります。

本以外に何を入れると効くか

名前は book ですが、入力は「構造のある散文」全般です。公式が挙げている候補:

  • 社内ドキュメント —— ADR、runbook、オンボーディング資料。docs/ を1スキルにまとめて実装中に聞く
  • ブランド/デザインシステム —— トーンガイド、コンポーネント原則
  • 研究クラスタ —— 論文束+自分のメモ。あとから fold-in で更新
  • 仕様・標準 —— RFC、API契約、コンプライアンス文書

チカちゃん的な判定基準はシンプルで、「何度も開き直して、頭に入ってたら楽なのに……と思う文書」かどうか。一回読んで捨てる資料をスキル化する必要は薄いです。

注意点——すごい、のあとに置くブレーキ

1. スキャンPDFは別問題

デジタルPDF向け。画像スキャン中心のPDFは、先にOCRが必要です。ここを飛ばすと、抽出が空に近いのに生成だけ走って悲しいことになります。

2. 章見出しが特殊だと自動分割が弱い

公式PERFORMANCEの注記どおり、Pro Git のように Chapter N 見出しがなくセクションタイトルだけの本は、自動章分割が効かないことがあります。変換自体は動くけれど、章ファイルの切り方が荒くなる。そのときは手動でセクションを指定する前提で。

3. 生成コストと時間は「一度きり」でも無視できない

長い技術書の technical モードは、Doclingだけで数分〜十数分、そのあとエージェントが章ごとに書く時間も乗ります。バックグラウンドで流す前提のほうが精神衛生がいい。

4. 出力は「要約された二次資料」であって原典の代替ではない

Quality Rule にも「生テキストをコピーしない」「合成・要約・シグナル抽出」とあります。引用が厳密に必要な場面では、必ず原典に戻る。スキルは思考の道具であって、書誌的な証拠庫じゃない。

5. 生成スキルの再配布は危険

著作権のある第三者書籍から作ったスキルを公開・共有すると、権利者の権利を侵害し得ます。個人利用に留める。社内docsや自分の文章、オープンライセンス資料はそのライセンスの範囲で。

6. 「学習データに入ってる本」でも意味はある

有名な本ほど、モデルは一般知識を持っています。でもそれはインターネット全体の平均圧縮で、章番号や定式を平気で幻覚します。book-to-skill は あなたの手元のコピー に接地するので、ニッチな本・社内文書・新しい版で特に効きます。

チカちゃん的な見立て——これは何の道具か

ちょっと待って。ここまで書くと「便利な変換スクリプト」に見えます。でも扱っている問題は、もう少し深い気がする。

私たちは長いあいだ、「知識を持つ」ことと「知識に手が届く」ことを同一視してきました。本棚に並んでいる=読める。PDFがある=参照できる。でもエージェント時代の摩擦は違っていて、存在するのに、仕事の瞬間に届かない

book-to-skill がやっているのは、本を「読む対象」から「仕事中に呼び出せる道具」へ移すこと。そしてその移し方を、全文dumpでも類似検索でもなく、著者が結晶化した構造の抽出に寄せている。

反対側の見方も置いておきます。

  • 過大評価の罠: スキルができても、あなたが枠組みを理解していなければ、エージェントのそれっぽい適用を鵜呑みにするだけになり得る
  • 過小評価の罠: 「要約なら自分でできる」と思いがちだけど、毎回のdiscovery loop(目次を辿り直す、戻る、再解釈する)のコストは、人間にもエージェントにも地味に効く
  • ビジネス視点: トークン代の節約は表の数字。裏の価値は「同じ本を、チームのエージェントに同じ構造で渡せるか」——ただし著作権と共有ポリシーが先

つまりこれは技術の話でありながら、「私たちは知識をどこに住まわせたいのか」の話でもある。ドーン、というより静かに効いてくるタイプ。

まとめ——まず1冊、手元のコピーで

今日の歩き方を短くすると:

  1. git clone で skills フォルダに入れる(pip単体と混同しない)
  2. extract.py --check で抽出器を揃える
  3. 正当に持つ1冊で /book-to-skill path.pdf slug
  4. technical / text を選び、コスト見積もりを見てから生成
  5. /slug topic で仕事中に呼ぶ。再配布はしない

日本語の手順記事はまだ少なく、英語READMEをそのまま和訳しても「二系統インストール」や「Discovery Loop Tax」の勘所が抜けやすい——だから今日はそこを厚めに書きました。

答えを急がなくても大丈夫です。本棚の一冊が、ターミナルの隣に座れるようになるかどうか。それ自体が、ちょっとした実験です。

「この本、スキルにしたら何が変わる?」——その問いが残ったら、もう冒険は始まっています。

参考URL

book-to-skill(GitHub) → https://github.com/virgiliojr94/book-to-skill

Install ドキュメント → https://github.com/virgiliojr94/book-to-skill/blob/master/docs/INSTALL.md

Usage ドキュメント → https://github.com/virgiliojr94/book-to-skill/blob/master/docs/USAGE.md

How it works → https://github.com/virgiliojr94/book-to-skill/blob/master/docs/HOW_IT_WORKS.md

Performance(Discovery Loop Tax の実測) → https://github.com/virgiliojr94/book-to-skill/blob/master/docs/PERFORMANCE.md

FAQ → https://github.com/virgiliojr94/book-to-skill/blob/master/docs/FAQ.md

Agent Skills 標準 → https://github.com/agentskills/agentskills

GitHub Trending(weekly) → https://github.com/trending?since=weekly

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